皆さん、鳥瞰図(ちょうかんず)というものをご存知ですか。鳥瞰図とは、地図の技法の一種で、高い位置から見下ろしたように描いた図のことです。その絵地図は、まるで鳥が空の上から地上を眺めているような雰囲気です。この技法を用いて、山や川などの自然や建物などを立体的に表します。
この鳥瞰図を長い間作り続けているのが、鳥瞰図絵師の村松昭さんです。今回はその村松さんのお仕事場におじゃましました。
府中本町駅から、徒歩1分。こちらが村松さんの仕事場『アトリエ77』です。アトリエの側には、今まで手がけた作品がたくさん掲示されていて、道行く方の目を引いていました。
「こんにちは」と記者が挨拶をすると、「いらっしゃい、どうぞ」と村松さん。さっそく、上がらせて頂きました。
アトリエ内は、木で囲まれていてまるでログハウスのような雰囲気です。絵の具やマーカー、色鉛筆などの画材や、資料がたくさんあり、机には製作中の作品が置かれていました。
こちらは、現在製作中という「大井川」の散策絵図です。手前は下絵だそう。
鳥瞰図のつくり方はまず、奥にある川の地形図に色鉛筆で影をつけ、全体像をつかみます。そして現地に行って観察し気づいたことをメモし、木炭でおおまかにデッサンをして、鉛筆で下絵を描きます。それをもとにつくったのが真ん中の絵地図です。
細かい作業が多いため、製作には時間がかかり、一年ほどかかることもあるのだとか。
こちらは、日本の世界文化遺産にも登録された「富士山」の散策絵図です。こちらは、販売もされています。
今までに50点以上もの作品を制作しているという村松さん。その中で特に人気が高いのがこちらの作品です。「多摩川散策絵図(1300円)」、「富士山散策絵図(1200円)」、「屋久島散策絵図(1200円)」。じゃばら折りになっていて、開くと一枚の長い絵地図になっています。
それまでは、デザインのお仕事をされていたという村松さん。絵地図をつくり始めたきっかけは、調布に引っ越した際、転居のお知らせを友人などに知らせるため、お寺や植物園など町の様子を描き込んだ絵地図をつくったことが始まりだったそう。
その後、印刷会社から「本格的に絵地図をつくってみないか」というお誘いがあり、自然保護団体からの依頼などを中心にお仕事の幅を広げていったそうです。1977年頃から絵地図づくりを始めたため、アトリエの名前を「アトリエ77」にされたのだとか。
当時は、専門的に学ぶ場所や先生などもいなかったため、江戸時代の道中絵図やヨーロッパの絵地図などを参考に手探りで絵地図をつくっていたそうです。
「地図づくりは、何を捨てるかが大事なんですよ」と、語る村松さん。使う方にとって「わかりやすいこと」が一番重要なため、何を描いて何を省略するか、使う方の視点でしっかりと見極め描くことが大事だといいます。
アトリエの入り口には、山や川の絵地図が天井からたくさん吊り下げられていました。絵地図だけでなく、子どもから大人まで楽しめる川の絵本や、ポストカードなども販売しています。
「日本の川シリーズ」として出版されているこちらの絵本は、小さな男の子や生きものが神様と一緒に雲にのって、川の上流から下流までを旅します。橋や町の風景、鳥などの生きものが丁寧に描き込まれていて、その豊かな川の世界に惹きこまれます。子どもの目で見る川は、たくさんの発見に満ちていて、大人の記者もすっかり夢中になって読んでいました。
こちらの絵本や散策絵図は、アトリエのHPからもご注文いただけますので、気になる方は、HPをのぞいてみて下さいね。
旅のお供に事前学習に、またインテリアとしてもおススメの絵地図。楽しく奥深い絵地図を皆さんもぜひ、お手にとってご覧下さい。
※ 価格は全て税抜
アトリエ77
042-364-4441
府中市本町1-7-2 (地図)
9:00~19:00
定休日 不定休
駐車場なし
HP http://www2.odn.ne.jp/~cdf21010/
※記事は2015年11月時点のものです。